クリエイティブが強い街福岡だからこそできる、デザインのチカラ-ディーゼロ矢野社長

作り上げるWEBサイトのクオリティーに一切の妥協を許さない、福岡を代表するWEB制作プロダクションである株式会社ディーゼロ。全国的にも有名な企業や大学のサイトを制作する同社は「良いものを作る=営業活動」と信じ、営業ゼロで間もなく設立18年。真のクリエイティブを追求し続け、現在は九州他県にもその枠を広げ、海外の仕事をとっていくことも進めています。代表の矢野 修作氏に会社や福岡に対する想いや考え、そしてWEBサイト制作において大切なことについてお話を伺いました。
ディーゼロの役割は質の高い土台を作ること
ビルを建てる時、ビル建築の企画設計会社はたくさんありますが、最終的には大工さんやゼネコンの「ものをつくる」という技術力が必要になりますよね。
WEBサイトにおいてもマーケティングだったり、サービスだったり、キャンペーンだったり、広告だったりいろいろなものがありますけど、根源にはWEBサイトをつくる、モノをつくるというものがあります。ディーゼロはその根元の“モノをつくる”という技術力のところにコミットしています。
「こんなデザインがやりたい、こんなサイトを作りたい」というお客さんの要望を、技術でしっかりとクリアするということをやっています。
企業が、WEBサイトをどう活用していくは色々な考え方がありますが、私たちは、最初にクオリティ・ステータスの高い土台を作って、その上で「そのWEBサイトを自分の会社にあったものにどう成長させるか」というのを、常に考えていくことが大切だと考えています。
WEBはやったことを数値化して見ることができるので、失敗を成功に変えていけるというのがWEBの面白さですよね。従来の広告ではなかなか効果が数字で見ることが出来ないので効果を測定しにくい側面がありますが、WEBは数値を見て効果を判断出来ますし、そういう判断ができる環境も必要です。
WEBサイト制作において大切にしていること
サイト制作の依頼を受けた際には、要望の向こうに何があるのかをしっかりと聞くようにしています。
商売をしている方のほとんどの場合は、もっと集客したい、売上を増やしたい、そういう要望が多いのですが、その数値の表面だけをとってしまうと、単純に数字を上げるためにどういう戦略をとるのかという目先の施策になってしまいます。
“マーケティングができていないから”というようなことではなくて、もっと根元的なところですね。
中に入り込んだ上で、出た課題を技術やデザインで解決していくわけですが、場合によっては、課題がWEBではないこともあります。そういう時はお断りして、適した会社をご紹介しています。
体に痛い部分があって外科と思って来たら、お医者さんが神経科的解決が必要と判断したら、神経科を紹介するのと一緒ですね。
問題解決策がデザインを通じていろいろある中で、ディーゼロが一番大事にしていることは「画的にダサイものは作りたくない」ということです。「デザインは”かっこいいの”を作ることが仕事じゃないよ」という方もいますが、僕はそれは次のステップの話で、”かっこいい”が基本だと考えています。
クールでいいものを作った上で、課題解決策としてきちんとUI、UXがあるべきですよね。ですが、最近の傾向として、いろいろな手法やトレンドを言い訳にダサいものが作られすぎていると思っています。
意味があってやるのはいいけど、過去の成功パターンに当てはめて似たようなサイトを作りすぎだと思います。
成功への正しいプロセスはなく、仮説をたてチャレンジすることが成功への近道だと思っていますし、失敗を検証しどう成功に変えるかがWEBの面白さだと思うんですよね。WEBの場合は(数値化されるので)失敗したという理由がわかります。なので、毎回、毎回お客さんと一生懸命解決策を考えています。
『いいモノを作る=営業活動』と信じ経営しています。ディーゼロは社員が40人位いるのに、営業がいないのですが、お客様から問い合わせがあったり、紹介いただいたりで、売上の9割近くが新規のサイト制作です。なので年間300サイト近くのサイトを作っています。制作を通じて自社ブランディングをやっているという感覚です。ある意味全員営業ですね。営業コストを削ることによって、その分をデザイナーやクリエイティブの業種に還元したいという想いから営業を置いていないのですが、営業を挟むことによるコミュニケーションコストも削れるというメリットもあります。
デザインの力
通常のマーケティングからは導かれない、予想以上の結果が生み出せるのはクリエイティブしかないと思っています。
でも、実はクリエイティブとかデザインって全然特別なものじゃなくて、街中にあふれていて、それを楽しむことができることができるんですよね。
例えば、目の前にグラスがあったとします。ただ飲むだけではただのグラスなのですが、実は透明な要素の中になんとなく青いラインが入っているなとか、何気に持ちやすい形状になっているなとか、そういう人の想いがデザインに込められているんですね。それを汲み取ろうと色んな視点で物事を考えていくとクリエイティブ力は伸びていくし、これが楽しいことなんです。
そんなことを考えているデザイナーって絶対に伸びるんですね。学校などで登壇すると、必ず最後に人間観察と、街中の看板と喋ることをやりなさいと言っているくらいです。
要は、モノを通して人とコミュニケーションができる。無機質なデザインの中に有機的な要素が含まれているのがデザインの面白さだし、デザインの力だなと思います。
WEBをやっていく企業に大切にしてほしいこと
企業にはそれぞれ特性があり、成功プロセスや成功パターンもそれぞれ異なります。それをデザイナーと一緒に考えるという思考がとても大切だと思います。デザイナーと仕事をするのって、そのプロセスを共に体験・共有することにも価値があるんですよ。
よくロゴマークの制作依頼をして、案が複数出てきた時に、多数決で選ぶということがありますが、それだけはやめてくださいとお願いしています。「ロゴマークをデザイナーと築き上げていくコミュニケーションプロセスが資産なんです」とお伝えしています。
コーポーレートアイデンティティ(CI)について、これまで会社が言葉で説明できなかったものが、(ロゴマークができることによって、)説明できるようになったり、絵で説明できるようになったりする。それはひとつの「進化」ですし、そこで新たな会社理念が生まれたりしますしね。
もう一つ、WEB制作会社の選ぶ時は、価値観が合うかどうかがとても大切です。
価値観が近い制作会社と社長・担当者同士がしっかりと話をした上で、お願いするべきだと思います。
あと、価値観が同じ制作会社を選んだ方がいいですね。また、仕事の規模とスケジュール感が合うかどうかが重要です。
例えば、3ページのちょっとしたページを作りたいというときに、日頃300ページの大きな案件を制作する会社にお願いしても、親身になってもらえないです。もちろん、逆のケースでも合いません。
それと中小企業でよくあるパターンですが、「外頼み」はだめです。
外の人は中の人ほど一生懸命ではない。費用対効果でOKであればそれ以上一生懸命になりにくいです。
兼任でもいいので、まず担当者をつけて、その人を育てるべきですね。
社内の人間に無駄なことをいっぱいさせることが、成長につながると思います。
お客様の精神的な満足やコミュニケーションも含め本当の意味で明太子を売れるのは、明太子屋さんであることを忘れないで欲しいです。僕らはそのお手伝いしかできません。
まずは、自分たちでアナリティクス(Googleが提供するウェブ解析ツール)を見ながら、そのサイトの特性上、どういう結果を生んでいるのか、客観的な視点で見る。
その数字をみて、分析・解析までしなくていいので、まずは指数を把握することからはじめるといいですね。
そして、もっとWEBで成果を上げたいとなったら専門家に相談してください。
その数字を知っているか知っていないかで専門家と仕事をした時に吸収出来る事が大きく変わってくると思います。
福岡はクリエイティブが強い街
地域ごとに特性がありますが、福岡はクリエイティブが強い街だと感じています。
なぜ強いのか。それは、福岡はチームビルディングが得意だからだと思います。
東京では、優秀なデザイナー、エンジニアは尖った人、いわゆる”I型人材(スペシャリスト)”と呼ばれる人が多いですが、周りとコミュニケーションを取るのが下手だったりしますし、単価・コストが高い。
福岡では、どちらかというと優秀な人間は、”T型(多職種連携)”とよばれる人で、尖りながらも両サイドの人と手をつなぐことができる人が多い。また福岡は、通勤面なども含め、時間的にも余裕があるので、他人のことを気にかけることができます。
他人を知ることがチームビルディングにつながるので、尖りながら両サイドの人と手をつなぐことができる、福岡は本当に強いと思います。単に「面白いことをやっていきたい」「東京に負けたくない」ではなく、それぞれの地域のWEBの特性、クリエイティブの特性にきちっと向かい合って、仕事をしていきたいと思っています。
なので、チームビルディングというのはとても大事にしていますね。
全国の会社が「WEBサイトをつくるなら九州・福岡だよね」って言ってもらえるようになるように頑張っていきたいです。東京や世界に出て行くのではなく、東京や世界に福岡を見てもらう視点を大事にしていきたいです。
最近、大分にもWEBコーディング専門の会社「株式会社ashigaru」を作ったのですが、今後は九州各県に特性のあるクリエイティブを作って九州という単位でクリエイティブ色を強めていきたいと思っています。また、サンフランシスコに支社がある企業と業務提携をして海外の仕事をとっていくこともやっています。
そして培ったノウハウで九州の中小企業を、クリエイティブで全国や世界で戦えるよう後押しをやっていきたいと思っています。