有名スタートアップが続々と紙のマガジンを発刊!

米国発の車のシェアリングサービスのUber、部屋のシェアリングサービスのAirBnB、そしてホテルチェーンのMarriottなどの有名スタートアップが、立て続けにWeb、紙のマガジンを発刊する動きを見せています。当記事では、マガジンに注力するそれら有名スタートアップの動向をご紹介します。

進化し続けているコンテンツ・マーケティング

日本においてコンテンツ・マーケティングはかなり認知されるようになってきました。そしてそれに伴いオウンドメディアを運営する企業も爆発的に増えました。そのコンテンツ・マーケティングは米国において進化し続けているようです。マガジンという形でコンテンツ・マーケティングを実施するようになってきているのです。

従来のコンテンツ・マーケティングは「有益な情報のコンテンツを提供し見込み客を育成し、購買へつなげる」でした。しかし、UberやAirBnBが発刊するマガジンはそのようなコンテンツ・マーケティングとは一線を画する「ライフスタイルを提示し、そのライフスタイルにユーザーに共感してもらうことで自社商品・サービスのファンを増やす」ことを目的にしています。

その進化し続けているコンテンツ・マーケティングと、それを推し進めるスタートアップが見据えている行き先はどこなのでしょうか。

Uberのドライバーのための紙マガジン「Momentum」


Momentum

Uberは車のシェアリングサービスを提供しています。2015年3月にUberは「Momentum」というは紙のマガジンを15万人以上のドライバーに配布しました。マガジンのページ数は15ページと少なめで、内容は以下のようになっています。

・Ryan Graves氏(Uberのグローバル事業責任者)の挨拶
・Uber最初のドライバーSofiane氏へのインタビュー/サンフランシスコエリアで2万回以上も運転をしてきたというUber初のドライバーであるSofiane氏のライフスタイルについて迫ります。
・車で1日中過ごすドライバーが健康に過ごすための豆知識/たとえば十分に水分を摂取する、車内で実践できる体操など。
・それぞれのドライバーの営業地区に合わせた公衆トイレの情報

車のシェアリングサービスの業界ではUberが圧倒的な成功を収めて多くのシェアを持っています。しかし、Lyftを始めとする競合他社も多く存在し、業界内でのユーザー≒ドライバーの引き抜きが多いようです。

車のシェアリングサービスにおいて運転手はサービスの質を決定づける要因でもあるので運転手のエンゲージは欠かせません。そこでこのMomentumの発刊にいたったようです。インターネット上でユーザー(ドライバー)との交流が完結する業界であるにもかかわらず、あえて紙のマガジンを発刊して配布することで同業他社との差別化につながるのです。

また、ドライバーにとってロールモデルになるベテランドライバーの生活を紹介するコーナーを設けたりと、理想のライフスタイルを提案する内容となっているところもポイントです。

Airbnbのホストのための紙マガジン「Pineapple」



Pineapple
 

2014年11月、部屋のシェアリングサービスのAirbnbは紙マガジン「Pineapple」を18000人のホストに配布しました。128ページでかなり本格的なマガジンとなっています。Pineappleにはホストとゲストのユニークな交流体験談が中心に掲載されています。

また今後Airbnbは 新聞紙、マガジンを出版している出版社Hearst 社と合同で旅をテーマとするマガジンを発刊するベンチャー企業を立ち上げることを企画しています。またそのマガジンはホストを対象とするものではなく旅人向けのライフスタイルを提案する内容であると言われています。

AirbnbのCMO(最高マーケティング責任者)のJonathan Mildenhall(以下ジョナサン)氏は

”Airbnbを通して体験できる旅は消費、観光以上のものなんだよね。コミュニティー、つながりそのものなんだ。”

とPineapple発刊の際のプレスリリースで語っています。AirbnbはPineappleというマガジンを通じて、単なるWebサービスという存在ではなく、旅というライフスタイルを提供する存在としてユーザーに認知されることを実現したいのでしょう。

ホテルチェーンのMarriottのWebマガジン「Marriott Traveller」



Marriott Traveller
 

世界中にホテルチェーンを展開するMarriottのWebマガジン「Marriott Traveller」。Marriottは全米中の各エリアのスポット(食事、景色、ファッションなど)を紹介する質の高いコラム記事を用意しています。それらの記事は商業マガジンの記事と同じくらい質が高いです。

Marriottはコンテンツを製作する「コンテンツスタジオ」を自社内で抱え、旅ジャーナリストと提携することで圧倒的なクオリティーの記事を揃えたWebマガジンを作ることに成功しているそうです。このマガジンによるコンテンツ・マーケティングへの本気度から「出版社になったMarriott」と米国で喩えられるているくらいなのです。

実際に、その本気なWebマガジンには月間で4000万ものアクセスがある上に、マガジン開始後90日間でマガジン経由の部屋の予約が7200を上回ったそうです。

このホテルチェーンの範疇を超えた本気なコンテンツ・マーケティングへの取り組みからは参考にできるところは多いのではないでしょうか。


「本気な」コンテンツ・マーケティング

 

今回ご紹介したようなマガジンを活用することで、ユーザーの生活により沿った身近な存在としてサービスを認知してもらうことができます。ユーザーが気づかぬ間にそのコンテンツに接しているというのが最高のコンテンツ・マーケティングと言えるのではないでしょうか。

当記事でご紹介したUberやAirbnbのようなライフスタイルを提案する紙マガジン、まるで出版社のようなMarriottのWebマガジン、これらのマガジンのような非常に質の高い「本気な」コンテンツ・マーケティングを実施していく流れは今後さらに強まることでしょう。


森本 進也「有名スタートアップが続々と紙のマガジンを発刊!」2016-04-07更新、http://www.lancers.jp/sharebiz/1979、2016-06-21 引用