加熱する福岡インバウンド!訪日外国人が集まるあの店を分析

2016年に福岡を訪れた外国人の数は去年の数を上回る200万人を突破。2015年に流行語大賞を獲得した「爆買い」は失速したといわれていますが、引き続きその経済効果は大きく、上手に潮流を捕まえて成果を上げている企業が存在します。その成功の理由をマーケティング視点で分析してみました。

インバウンドの購買行動をマーケティング的に分析してみよう

外国人観光客を取り込みたいというとき、何より重要なのは、その購買行動を理解することです。購買行動というと、日本にやってきて買い物をする外国人の姿を思い浮かべるかもしれませんが、訪日外国人の購買行動は日本に来る「前」から始まっています。その一連の購買行動は「DECAX」という購買行動モデルにあてはめることができます。

DECAXは、
Discovery(発見)→Engage(関係)→Check(確認)→Action(購買)→eXperience(体験と共有)
という購買行動の流れを表したものです。

私達が海外へ旅行へ行くとき出発前にインターネットやガイドブックを利用して現地の情報を集めるのと同様、外国人もインターネット等を使って情報収集してから福岡へやってきます。「観光地」や「買いたいもの」「行きたいお店」「食べたいグルメ」などの情報を発見し(Discovery)、詳細を調べて理解を深めていきます(Engage)。

日本にやってきてからは、事前に調べていた情報を確認しつつ納得した上で(Check)、製品やサービスを購入します(Action)。そして帰国後は日本での体験をSNSやブログなどで共有します(eXperience)。

こうした購買行動を理解したうえで、外国人観光客ならではの事情を踏まえて施策を考えていくことが成功の要因といえるでしょう。
   



訪日前外国人へのアプローチに成功した「極味や」

福岡パルコにあるハンバーグレストラン「極味や(きわみや)」は、行列が絶えないインバウンド繁盛店です。特に韓国人旅行客が非常にたくさん来店しています。

訪日外国人は、事前にインターネットを使って情報収集し、「買物リスト」や「行く場所」を決めてから日本にやってきます。そのため、日本に来る前の情報収集の段階でアプローチすることは非常に重要な施策です。情報収集に使うチャネルは国によって大きく違っており、例えば中国では中国独自のSNS「微博(weibo)」や検索エンジン「百度(baidu)」で情報収集されており、GoogleやFacebook、Twitterは規制の対象となっているため使われていません。

韓国ではNaverやDAUMといった検索エンジンも利用されますが、情報源として一番信頼しているのが個人ブログ。過去に福岡に旅行へ行った人のブログを見て情報を収集しています。「極味や」が韓国人のあいだでブレイクしたのも個人ブログがきっかけでした。

福岡に来る外国人観光客は韓国人が6割以上を占めています(次いで台湾・中国)。「極味や」は、大きな割合を占める韓国人観光客の評価を得られたことで来客数が増え、帰国した韓国人がまたブログ等で情報を広めて、さらに来客数が増えるいう好循環につながっています。

<参考>

極味や(きわみや)
http://www.kiwamiya.com/

九州における観光の動向 - 経済産業省 九州経済産業局
http://www.kyushu.meti.go.jp/report/0908_kankou/houkokusyo-20.pdf

出典:極味や(きわみや) http://www.kiwamiya.com/
出典:極味や(きわみや) http://www.kiwamiya.com/


 

利便性を高めて満足度を向上する「キャナルシティ博多」

キャナルシティ博多は、さまざまな方法で訪日外国人の利便性を満たし、「ここに行けば安心して楽しめる」人気のスポットとして定着することに成功しています。キャナルシティ博多の取り組みの一部をご紹介します。
 
・韓国国内で最大シェアのクレジットカード「新韓カード」での決済を日本で初めて可能に
・中国の銀聯カードでの決済も可能
・店内タッチパネルの多言語表示
・自動外貨両替機の設置
・免税対応店舗の増強
・ラオックスやユニクロ、無印良品、ABCマート、マツモトキヨシなど、外国人に人気のあるテナント
・スマホ等で情報収集しやすいよう無料wifiを提供

このようなインバウンド戦略が奏功し、2015年3月期には売上高を前期の7.7%増としました。

2016年10月には、観光案内所にカフェ・みやげ物販売・日本文化体験ブースを併設した「ツーリストラウンジ」がオープン。手ぶら観光のための荷物預かりサービスなども提供し、外国人観光客の利便性や満足度を高めることでさらなる集客を目指しています。

<参考>

キャナルシティ博多免税店
https://canalcity.co.jp/service/sale/tax_free

キャナルツーリストラウンジ
http://www.ctl.inboundhub.jp/

出典:キャナルツーリストラウンジ http://www.ctl.inboundhub.jp/
 



日本ならではの体験が喜ばれる「柳川市の川下り」

キャナルシティ博多の外国人案内所に体験スポットがオープンしたことからもわかるとおり、現在、着物の着付けや習字、果物狩りなどの体験型観光がインバウンドのトレンドとなっています。

インバウンドというと爆買いのイメージから「モノを売ること」に目がいきがちですが、外国人旅行客が望んでいるのは買物だけではありません。日本人も海外へ旅行へ行けば海外らしい体験をしたいと考えます。例えばニュージーランドへ行ったら多くの旅行客が羊の毛刈りを体験します。それは日本を訪れる外国人も同じです。

福岡県で、その体験型観光に取り組んでいるのが柳川市です。柳川市には従来「川下り」という伝統的な体験型観光があり、冬は日本独自の文化であるこたつを載せたこたつ舟を体験できる・船頭さんが日本の歌を歌ってくれるなど、訪日外国人の人気スポットとなっています。

川下りを運営する各社のWebサイトは多言語対応となっており、外国人客を受け入れる体制を整えています。また、柳川市の観光パンフレットは英語・韓国語・中国語(簡体字・繁体字)の4種類が用意されており、事前にWebサイトで情報収集したい外国人のニーズにも応えています。

<参考>
水郷柳川観光株式会社
http://kawakudari.com/

柳川市
http://www.city.yanagawa.fukuoka.jp/kanko/shiru/pamph/tabimonogatari.html

出典:水郷柳川観光株式会社 http://kawakudari.com/
 



いかがでしたか?

福岡の旅行で満足の行く体験・経験をした人は、帰国後、それをブログやSNSなどで拡散します。それが新規獲得につながり、また、リピート客の獲得につながります。外国人のニーズを把握して、どうすれば福岡を便利に楽しく過ごして帰ってもらえるかを顧客視点で考えること、訪日前から訪日後までの動向をトータルで考えることが、インバウンド集客成功の秘訣といえるでしょう。

 
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